バーベキュースパイスのおすすめは5つ|まず揃える基本
バーベキューのスパイス売り場に立つと、正直、どれを買えばいいのか分からなくなりますよね。棚には市販のラブがずらりと並んでいて、単品のスパイスも数十種類。全部そろえたら財布も棚もパンクします。結論から言うと、まずは塩・黒胡椒・ガーリック・オニオン・パプリカの5つだけでいいんです。この5つは「旨味のインフラ」とでも呼びたい土台で、これさえあれば肉も魚介も野菜も、それらしい味に決まります。今日はその理由と、実際の混ぜ方・使い方までお話しします。
まず揃えるバーベキュースパイスは、この5つでいい
なぜ5つなのか。理由はシンプルで、この5種はそれぞれ役割がはっきり分かれていて、しかもケンカしないからです。塩は味の土台、黒胡椒は香りと刺激、ガーリックとオニオンは旨味と甘み、パプリカは色と照り。5つそろえば、味・香り・旨味・見た目という料理の要素がひととおり埋まります。
逆に、最初から手を出すと危ないスパイスもあります。強い香りのスパイス、たとえばシナモンやクローブ、カルダモン、スターアニスといった面々は、全体の0.5〜5%、つまりほんの数%までに抑えるのが大原則で、これを超えると一気に料理を支配してしまう。シナモンを入れすぎればアップルパイの味に、クローブを入れすぎれば消毒液のような風味に、カルダモンが過ぎれば石鹸っぽく、スターアニスが立ちすぎれば漢方薬のように転びます。少量で全体を動かす劇薬のような存在で、扱いには慣れがいるんです。その点、今日の5つは多少ざっくり使っても大崩れしません。初心者に優しいメンバーだと思ってください。
もうひとつ、うれしい性質があります。複数のスパイスを混ぜるとマスキング効果といって、それぞれのクセが単独で使うより穏やかになる。5つを合わせるだけで、角の取れたまとまった味になってくれるんですね。単品で舐めると「これ料理に使えるの?」と思うようなものでも、混ぜると化けます。
旨味の裏方「ガーリック・オニオン」— 加熱で甘くなる二枚看板
この5つの中でも、味の深みを一手に引き受けているのがガーリックとオニオンです。生のままだとツンとしますが、グリルの熱に出会うとナッツのような香ばしさと甘みに変わる。特にオニオンは加熱で甘みが大きく増して、肉の脂に溶け込んでいきます。表には出てこないけれど、「なんか美味しい」を陰で支えている裏方だと思ってください。
この二つには歴史の重みもあります。紀元前3000年ごろのエジプトでは、ピラミッド建設の労働者たちに、にんにくと玉ねぎが配られていたと言われています。人類はずいぶん昔から、この二つを重宝してきたんですね。何千年も選ばれ続けてきた食材が、いまも私たちのグリルの上で働いている。そう思うと、この裏方コンビにも愛着がわいてきます。
ひとつだけ注意点があります。オニオンパウダーとパプリカは湿気を吸って固まりやすい。開封後にダマになりやすいので、粗めのグラニュール状のものを選ぶと扱いやすいです。買うときに粒の状態をちらっと見ておくと、あとで楽になります。
色と香りの主役「パプリカ・黒胡椒」、土台の「塩」
パプリカは唐辛子の辛くない変異種で、担当は色と照り。ふりかけて焼くと、あの食欲をそそる赤茶色の焼き色が出ます。味というより見た目で仕事をするスパイス、と覚えておくといいです。焼き上がりの写真映えも、実はこのパプリカがかなり効いています。
黒胡椒は香りと刺激の担当。面白いことに、中世ヨーロッパでは通貨の代わりになるほど貴重だったと言われています。ひと粒ひと粒がお金として扱われた時代があったと思うと、食卓の胡椒挽きも少し特別に見えてきます。この黒胡椒は牛の脂ととても相性がよく、後で紹介するテキサスの王道ラブでは主役級に使われます。ちなみに白身魚や魚介には、黒胡椒より白胡椒のほうが上品にまとまります。使い分けの余地があるので、余裕が出てきたら白胡椒も足してみてください。
そして塩。地味ですが、これが味の土台です。塩は味付けであると同時に、下ごしらえの一歩目としても働きます。素材の水分を引き出して、そのあとのスパイスが乗りやすい状態を作ってくれる。派手さはないけれど、これが抜けると全部が締まりません。
5つをどう混ぜる?王道テキサスラブの骨格
「揃えたはいいけど、どの割合で混ぜるの?」という声が聞こえてきそうです。目安として、ビーフ向けの王道テキサス・ブラックペッパー&ガーリックラブの配合を紹介します。100gボトル基準で、粗挽き黒胡椒30/岩塩30/ガーリックパウダー15/オニオンパウダー15/パプリカ7、そこに香りづけのカルダモン3。つまりカルダモン3gを除いた97g、ほぼ全量(約97%)が今日の5つで組み上がる配合です。
整理すると塩と黒胡椒を同量で軸にし、ガーリックとオニオンを半量ずつ、パプリカを少し。この骨格を覚えておけば、あとは好みで動かせます。牛なら黒胡椒を強めに、鶏や野菜なら塩を控えめにパプリカを立てる、といった具合です。まずはこの比率で一度作って、自分の舌で微調整していくのが上達の近道。知識ではなく、触れて香りを確かめて体で覚えるのがスパイスの世界です。
慣れてきて「スパイスの女王」と呼ばれるカルダモンをほんの少し足すと、清涼感と甘い香りが加わって、ぐっと立体的になります。ただし、ここでも大原則は同じ。強い香りは全体の0.5〜5%、つまりほんの数%まで。カルダモンの3gという数字は、100gの中でそれだけ存在感が大きいということでもあります。足すなら耳かき一杯のつもりで、こわごわ入れるくらいでちょうどいいです。
市販のラブと、自分で5つ揃えること
「市販のBBQラブを買えばいいのでは?」と思うかもしれません。もちろん市販の合わせスパイスは手軽で完成度も高く、最初の一本としては十分アリです。ただ、市販品は言ってみれば完成した一つの答え。塩気も甘さも作り手が決めた比率で固定されています。
いっぽう5つを単品で持つと、配合の主導権が自分の手に残る。今日は黒胡椒を効かせたい、子ども用は塩を減らしたい、といった調整が自由にできます。市販ラブで「なんとなくの正解」を知り、単品5つで「自分の正解」を作っていく。両方あると、バーベキューの味が一段深くなります。単品スパイスはスパイス特設ページで少しずつ揃えていくのがおすすめです。
保存と使い方 — せっかくの5つを湿気で失わないために
最後に扱い方を。ドライラブは未焙煎のまま密封して冷暗所で保存します。グリルの上で肉の脂と熱に出会った瞬間に、はじめて香りに火が入る設計だからです。保存の敵は光・熱・湿度・空気の4つ。コンロの真横に置きっぱなしにすると、せっかくの香りが飛んでしまいます。買ったら小さめの密封容器に移して、シンク下や引き出しのような暗くて涼しい場所にしまうと長持ちします。
使う流れも型があります。①塩をふって水分を出す→②オイルを薄くまとわせる→③ラブを圧着する→④焼く。ラブが滑り落ちてしまう人は、ディジョンマスタードを薄く下塗りしてバインダー(接着役)にすると、しっかり張りつきます。マスタードの酸味は焼くとほぼ消えるので、味の心配はいりません。
焼く温度と粒度の関係も覚えておくと失敗しません。ダイレクトで180〜230℃の高温短時間で焼くなら、焦げにくい粗挽きを。逆に120〜150℃のインダイレクトでじっくり火を入れるLow & Slowは、香りを脂に定着させたいときや砂糖入りのラブに向いています。粒度は素材で変えると失敗が減って、塊肉には16メッシュくらいの粗挽き、チキンには中くらい、魚介にはパウダーが合います。
量を抑えるほど、旨味は引き立つ。かけすぎないことも立派なテクニックです。
この5つに慣れてきたら、ジンジャーやコリアンダーを足して自分のラブを育てていってください。作った味を実際の炭火で試したくなったら、月に一度の集まりも待っています。イベントの様子はこちらから覗いてみてくださいね。まずは5つ。ここから始めましょう。