週末のBBQを楽しみにしていたのに、前日の予報に雨マークがついている。あの、ちょっと肩を落とす感じ、よくわかります。僕らも何度も経験してきましたし、正直に言うと「あー、また今回もか」とスマホを見ながらため息をついたことも一度や二度ではないんですよね。
でも、何度か雨のなかでBBQをやってみて、個人的にたどり着いた結論があります。それは、雨の日のBBQは、じつは悪くないということです。むしろ、晴れの日には味わえない濃さがそこにあったりします。今日はそのあたりの話を、隣でぽつぽつ話すくらいの温度で書いてみたいと思います。
火は、雨に思ったより強い
まず、多くの方が心配するのが「雨で火が消えるんじゃないか」というところだと思います。これ、直火のBBQをイメージしていると当然の不安なんですよね。網の上で肌をむき出しにした炭に雨が当たれば、そりゃあ火は弱りますし、煙も立たなくなります。昔ながらのBBQで雨が敬遠されてきたのは、この直火のイメージがあるからだと思うんです。
ところが、僕らがやっている蓋付きグリルのBBQは、ここが決定的に違います。炭は蓋の内側でしっかり守られていて、雨は直接当たりません。蓋を閉じたまま熱が対流していく仕組みなので、外がしとしと降っていても、グリルの中はいつもどおりの温度をキープしてくれるんですよね。むしろ湿度が高い日は食材の水分も飛びにくくて、しっとり仕上がることさえあります。
この「蓋を閉める」という一手が効いてくる場面は、じつは雨の日にこそ一番はっきり出ます。焦がさず、水分を保ち、食材のポテンシャルを引き出す。晴れの日にありがたみを感じにくいこのロジックが、雨の日には「ああ、だから蓋付きなのか」と体でわかる。道具のありがたさを一番教えてくれるのは、悪天候なのかもしれません。火の配置や温度の考え方そのものはACADEMYで体系立てて触れていますので、技術の背骨を知りたい方はそちらものぞいてみてください。
屋根の下に寄り集まると、会話が濃くなる
雨の日のBBQで、僕がいちばん好きなのはここなんです。
晴れて開放的な日は、それはそれで最高なんですけど、人がわりと広く散らばるんですよね。あっちで飲んでいる人、こっちで子どもを追いかけている人、離れたベンチで話し込んでいる人。それはそれで気持ちのいい光景です。でも雨の日は、みんな自然とタープや屋根のある一角に寄り集まります。肩が触れそうな距離で、同じ火を囲んで、外の雨音を聞きながら過ごすことになる。
この「密度が上がる」感じが、会話の質を変えるんですよね。無理に話題をつくらなくても、雨の音がBGMになってくれるので、沈黙すら心地いい。ぽつりと誰かが話しはじめて、それにゆるく相づちが返って、また静かになる。この揺らぎのある時間って、晴れて賑やかな日にはなかなか生まれないものだと個人的には思っています。
僕らがBBQで本当に届けたいのは、じつは「美味しい」のもう一歩先にある、場の空気が変わる感覚なんです。会話の質が変わる、言葉がなくても場が成り立つ、あの感じ。雨の日はその状態に、むしろ入りやすい。屋根という制約が、人と人の距離を勝手に縮めてくれるからだと思います。制約は、時にいちばんのごちそうになります。
それでも、中止の基準は持っておく
ここまで雨を褒めてきましたが、なんでもかんでも決行すればいいという話ではありません。ここはホストとして、はっきり線を引いておきたいところです。雨は歓迎できても、風と雷は話が別なんですよね。
僕らが目安にしているのはシンプルで、まず雷注意報が出ているとき、遠くでも雷鳴が聞こえるときは、迷わず中止か延期です。これは楽しさ以前の、安全の問題なので譲りません。次に強風。タープやテントは風にとても弱くて、強い風のなかで無理に張ると、飛ばされたり火の粉が流れたりして危ないんです。風が強い予報の日は、屋根があっても見送る判断をします。
逆に言うと、風のない、しとしとした雨くらいなら、僕らはわりと決行します。タープを一枚しっかり張れる場所か、屋根付きの区画があるBBQ場かどうか。そこさえ押さえられていれば、雨そのものはむしろ味方になってくれます。会場を予約する段階で「雨天時に使える屋根はあるか」を確認しておくだけで、当日の判断がぐっと楽になりますよ。
大事なのは、この基準を当日ではなく、事前に決めておくことだと思っています。空を見上げながらその場で「どうしようか」と迷うと、判断がブレますし、参加してくれる人も不安になります。ホストが先に線を引いておく。これはメンバーへの、いちばん静かな安心の渡し方なんですよね。
雨の日ホストの、小さな一歩
では、実際に雨模様の日にホストをやるとして、今日からできる小さな準備をいくつか。どれも特別なものはいらなくて、普通のスーパーやホームセンターで揃うものばかりです。
- タープや屋根の下の動線をイメージしておく。 グリルは屋根の外側ぎりぎり、人は内側。煙と熱がこもらないように、風の抜け道を一本つくっておくと安心です。
- 足元を一枚。 雨の日はどうしても地面がぬかるみます。すのこや簡易マットが一枚あるだけで、当日の快適さがまるで違ってきます。
- タオルとキッチンペーパーを多めに。 濡れた手、濡れた道具、濡れたテーブル。拭くものは晴れの日の倍あってちょうどいいくらいです。かさばるものだからこそ、来てくれる人に一言お願いして分担すると、ホストの負担がふっと軽くなります。
- 温かい一品を用意しておく。 雨の日は体が冷えます。スープでも、熱々のグリル野菜でもいい。冷える日に湯気の立つものが出てくると、それだけで場がほどけるんですよね。
あともう一つ、これは心の準備の話ですが。雨の日は、何もかもを一人で背負い込まないことだと思います。野菜を切って持ってきてもらう、拭くものを分担してもらう、屋根の下のセッティングを一緒にやってもらう。雨という少しの不便を、みんなで手分けして越えていく過程そのものが、じつはいい時間になります。困りごとを分け合った日のことって、あとで妙に記憶に残るんですよね。
予報に雨マークがついても
雨の日のBBQは、たしかに晴れの日より少しだけ手間がかかります。でもその手間の向こうに、屋根の下でぎゅっと集まって、雨音を聞きながら同じ火を囲む、あの濃い時間が待っています。天気に振り回されて予定をまるごと諦めてしまうのは、ちょっともったいないな、と個人的には思うんです。
もちろん、風と雷のときは無理をしない。その線だけは守って、あとは「雨だからこそ」を楽しむ。そんなふうに構えておけると、天気予報を見る目も少し変わってくるかもしれません。
僕らは月に一度、誰でも手ぶらで参加できるBBQを開いています。晴れの日も、雨の日も、その日その日の空とつきあいながらやっています。もし雨のなかで火を囲む時間に興味がわいたら、月1BBQの日にふらりと来てみてください。傘をたたんで屋根の下に入った瞬間の、あのちょっとほっとする感じを、一緒に味わえたらうれしいです。